第一回目は投資していたことすら忘れていたイラクの通貨、ディナールについてです。
総合評価
- 特殊度 ★★★☆☆
- 難易度 ★★☆☆☆
- 成果度 ★★☆☆☆
- 満足度 ★★★★☆
1、イラクディナールってなんですか?
イラクの通貨が"イラクディナール"。
イラクは国民もそこそこ多く(4千万人、国土がでかい割には少な目か)、原油の生産量も多かったので伝統的に通貨も強かったようです(1990年前までは米ドルペッグ)。しかし、1991年の湾岸戦争で3000分の1に価値が暴落しました。
その後、2003年のアメリカのイラク侵攻までの間、イラクディナールのレートは小康状態がつづいたようです(当時のレートの記録が見つからなかったのですが、なんとなくのレートは、こちらからつかめるかも)。
さらに時は流れて、2003年のアメリカ侵攻。ここでやっとフセインが倒れました。新しい議会もでき、2003年に通貨の切り替えを行いました。それが今回のイラクディナールです。イラク侵攻前は中国製で質の悪い紙幣だったのが、イギリス製にかわりました。
最高紙幣は25,000IRです。Wikipediaもみてみてください。
2、イラクディナールを買うと何がうれしいの?
その前に、現在と過去のレートの比較です、ざっくりいうとこんな感じです。
- 戦争前(1990年):1ディナール =2-3USD
- 戦争後(2003年):1ディナール = 0.0008USD
ざくっと3,000の1に下がっています。ちょっと、レートが飛び過ぎてますね。
最高紙幣の25,000IRで比較するとこんな感じです。
- 戦争前(1990年):25,000ディナール = 50,000-75,000USD
- 戦争後(2003年):25,000ディナール = 18USD
ぶっとんでますねー。もうお分かりの人もいると思いますが、このディナールを買って、その後イラクディナールの価値が上がれば、かなりの利益がとれるのです。
当時いわれていたのが、時間はかかるが、アメリカ軍が撤退した後(つまり治安も落ち着いているころ)、戦争によって(とそれにともない、自ら破壊した)生産施設が回復すれば、経済も軌道になるだろうと。さすがに、為替レートが湾岸戦争前の状態にもどる(3,000倍)のは無理だとしても、2,3倍くらい、欲を言えば10倍くらいあがるかもしれない。こういう風に思う人がけっこういたわけです。
イラクの原油埋蔵量は世界で5位には入るし、2、3倍くらいならいけるかも、しれません。。。
3、なんで自分がイラクディナールを買ったのか?
時は流れて2006年ころ、地方都市の大学生になった自分はインターンをしていました。
今でこそインターンといえば一般的で、就職活動の一環みたいな感じですが、当時はインターンがあったとしても、「1日社会見学」みたいな感じでした。そんな中、自分のインターンは半年間。しかも、金融関係(FP)の社長一人だけの小さな会社で、ホームページの作成を通して、海外投資やヘッジファンドの紹介等していました。
その中には香港に銀行口座を作りにいく投資ツアーなんてのもあって、なかなかおもしろい会社だったんです(自分も口座を作った話はまた後で)。そんなある日、社長がこのディナールの話をしていました。その会社は怪しいことはしていなかったので、お客さんに勧める等はなかったんですが、自分はこの時に初めてディナールを知りました。
当然、毎日の飲み会代に困っていた自分は購入なんてできません。
その後、2009年くらいだったとおもうのですが、社会人になって、お給料を貰うようになった自分はイラクディナールを思い出して、アメリカのサイトから購入しました。この時はたしかpaypal経由のクレジットカード決済で、Secure systemじゃなくて、メールでカード番号教えろとか言われて怪しい感じ満載でした(決裁後、次の日にカード会社に連絡してカードを念のために新しいのにしたり)
それから、時は流れて、10年以上。まったくこの存在を忘れていました。。。
ひさしぶりに探したところありました。
開封の儀
そうそうこんな感じの封筒でアメリカから届いた。
封筒のなかには恭しく帯がついた1,000,000IRが(手書きで"1mil"とかいてあるのがウケる)。
一枚、25,000IRなので40枚はいっています(結局、一度も数えてないけど)
円やドルと比較すると結構大きいんです。
買った通販会社の名刺みたいなのもはいってますね。
この会社、その名もDirarinfo.com。2020年現在はさすがに生き残ってはいなかっようで、現在、このドメインは売りにだされているようです。
4、結局もうかったの?
結果の前に、この記念すべき第一階うんばぼ投資のリスクは以下の通りです。
リスク
- 紙幣がニセモノのリスク
- 値上がりしないリスク
- 新札切り替えで価値がゼロになるリスク。
10年たったいま、(かなり手遅れな気がするけど)一つ一つ検証していきます。
1、紙幣がニセモノのリスク
⇒ (本物かどうか)正直わからない。
でも、手元にあるのはきれいなお札ですよ-。
インターンしていたころ、社長が「巷では偽造防止のホログラムが見える紫外線ライトと一緒に売っている」と言ってたので、調べることはできるはず。イギリス製だしね。
2、値上がりしないリスク
⇒ これが肝ですね。
2003年にフセインは捕まってすぐに戦争は終わりましたが、治安の悪化から2008年にアメリカは大規模増派を実施と、混乱が続きました。その後、治安も回復しだし、2020年にアメリカの完全撤退が実現しました。
湾岸戦争のもう一方の当事者のクウェートディナールは戦争で同じように通貨が暴落しました。が、すぐに700倍になったとのこと。イラクはかなりの産油国なので、今後も復興が続けば、通貨にも影響してくるはずです。
原油の生産量は、以下の通り(縦軸は1,000バーレル/日)。
2020年現在は400MM BBLS(ほぼ日本需要とおなじです)。アルカイダや治安が激悪ななかでも着実にふえています。この量は世界4位です(2019年時点、ソースEIA)
source: tradingeconomics.com
お次はGDPです。縦軸単位はUSD Billionです。
順調に伸びてますね。特に戦争終了後から2015年までの間は良いペース。
source: tradingeconomics.com
これだけの状況なら、少しはレートが上がってそうですね。結果は以下の通り(縦軸は1USD当たりのdinar)。
うーん、全くかわっていません。
ずいぶんフラットなところを見ると、イラクも余裕が出てきて、ドルペックにもどったようですね。何故か、親心のようにこの点は嬉しいです。ただし、米ドルペッグにもどしたということは今後もこれが続く可能性大なので、大幅な切り上げは見込めないかもしれません(直近で切り下がっているので、下げ傾向です)。
さぁ、お次は円ベースのレートが下記です。やはりこちらもほとんどかわってませんね(USD/JPYの為替変動分と考えて良さそうです)。
3、新札切り替えで価値がゼロになるリスク。
⇒ これは今回、このブログを書くにあたって調べるまで知りませんでしたが、安心しました。2022年現在でもこの紙幣が使われているようです。
日本でも戦後あったように、強制的に銀行にお金を預金させ、一気に旧札から新札に変える方法があります。この方法とセットで旧札を使用禁止にすることで、市中に出回っているお札が、一度銀行にはいってくるのでタンス預金や黒いお金も補足できます。最近だとインドで2018年にいきなりありましたね。
イラクディナールについてはせっかくイギリス製にしたとのことで今後もつかわれてほしいところ。
4、換金できないリスク
⇒ これができないと意味ないですがが、実際、これはその通りで、イラク国内でしか現状換金できないようです。
5、そもそもの初期レートが間違っているケース
⇒ このディナール投資は2010年ころに詐欺案件として消費者庁から警告があったようです。
以下のようにGoogleで検索してもザクザク出てきます。
それもそのはず、一枚25,000IR(当時日本円で200円程度)を2万以上で売ってたとのこと。実際のレートの10倍。
冒頭のスクリーンショットで使った、消費者生活センターの中には10万円で売っている例もあるほど。
今でも、ネットを探すと色々出てきます。さすがにバブルは去ったようですが、2万5千円くらいでうってます(2020年6月現在で2200円)。それでも、10倍。買う人いるのかなー。。。
自分はたしか、日本国内での業者がボッタすぎるのが調べて分かったので、アメリカから買ったと記憶しています。
おもしろいところだと、このサイト。もう、売れなくなったのか、「イラクディナール 投資」で検索するとこのサイトが一番上です。正しいレートを知っているひとは買わないですね。それも、後で時価で買いますと、言っているw。勝った瞬間に、1/10になるのにね。
肝心の自分の場合ですが、購入時の金額はよく覚えていません。でも、さすがに50%もマージンは入ってなかったと記憶している、10万円くらいで買った記憶があります(もう潰れちゃったみたいだけど良心的な会社だったようです)。
肝心の投資成績ですが、現在、25,000IRが2200円なんで1,000,000IQDは9万円くらい。ほぼとんとんですね。
最後に
以上、見てきたとおり投資としては10年以上たってもトントン、か、初期投資を若干下回っています。宝くじを買ったような気持だったので。
なにより、今も同じ紙幣が有効なので安心しました(笑)
最後に、一緒に入っていた名刺の裏側の広告がこれ。
イラクディナールが何倍になったらいくら儲かるのかがご丁寧にかかれています。その下の部分にこちょこちょかいてありますね。
おう、神頼みでprayもしないといけないわけですね。
うーん、decideしてからprayするべきで、順番が別なような。
現在、イラク国外では交換できないので、自分としては10数年後、平和になったイラクに是非観光で行って、この通貨をつかいたいところです。それまで新札切り替え等ないことをいのります。
総合得点7/10点
特殊度 ★★★☆☆
通貨に投資なのでいたって普通。けど、FXと違って究極の現物通貨投資なのでちょっと特殊。
難易度 ★★☆☆☆
いまでも売っている業者はあるので、手はだしやすいはず。
成果度 ★★☆☆☆
いまんとこ、ほぼ収支ゼロ。5%/年くらいの投資を目指していている自分にとってはちょっと。当初のような大化けも望み薄。
満足度 ★★★★☆
イラクの復興や国の成長と連動しているので、今後も保有して(ってか、どうしようもないので塩漬け)、いつイラク旅行で使いたい。それまで新札に変えないで!